インドビジネス成功マニュアル:元スズキ社員のリアルな経験から学ぶ5つの秘訣
- ラジャ・ゴピナート
- Jan 11
- 10 min read
Updated: Jun 5
インド市場は今、世界中の注目を集めています。急成長を遂げる経済、14億人を超える人口、そして地域ごとに広がる多様なビジネスチャンス。これらは、インド市場を進出や新規事業開発のターゲットにする理由として十分です。
とはいえ、インド市場参入には文化や規制、インフラといった課題も伴います。私自身、スズキの一員として現地での経験を積み、インド市場の可能性を肌で感じてきました。このブログでは、私の実体験をベースに、インド市場参入やインド事業展開で成功するための5つのポイントをお伝えします。
1. インド市場の持つ圧倒的なポテンシャル
インドの経済は今、世界中から注目されています。名目GDPで世界第5位、購買力平価(PPP)ではすでに世界第3位の規模です。さらに、IMFやS&P Globalによると、2030年までに名目GDPでも日本とドイツを抜き、世界第3位にランクインすると予測されています。2035年にはGDPが10兆ドルを超えるとも言われており、製造業、IT産業、サービス業など、さまざまな分野で大きなチャンスが期待されています。

さらに注目すべきは、その人口構成です。総人口14億人を超えるインドでは、その半数以上が30歳以下という若い労働力が豊富に存在しています。この若い世代が経済のエンジンとなり、市場開拓を後押ししています。中間所得層が急増していることで、自動車、家電、電子機器など、多くの分野で需要が急成長中。このような規模と成長性を持つ市場は、他にはありません。

2. インド事業展開における主要な課題
インド市場は可能性だけでなく、いくつかの乗り越えるべき壁も存在します。ただし、これらの課題を正しく理解し、準備を整えることで、スムーズなインド事業展開が可能です。
複雑な法規制と税制
インドでは州ごとに法律や税制が異なり、それぞれ独自のルールがあります。この多様性は、インド市場の特徴と言えます。例えば、ある州で販売できる製品が、隣の州では追加の手続きが必要になる場合もあります。
こうした違いに対応するには、現地の法律や税務に詳しい専門家と連携し、州ごとのルールを事前に確認しておくことが大切です。これをしっかり準備することで、インド事業をスムーズに進めるための基盤を築くことができます。
多様な文化と消費行動

インドは多言語・多宗教国家で、文化や消費行動が地域ごとに大きく異なります。中部のマハラストラーと南部のタミル・ナードゥでは、食文化や生活習慣が全く違い、受け入れられる商品やサービスも地域によって変わります。
だからこそ、インド事業展開前にはターゲット地域を明確にし、その地域の文化や消費者ニーズをしっかりと調査することが重要です。地域ごとの特徴に合わせたフレキシブルな対応力があれば、どの地域でも成功へのチャンスを掴むことができます。
地方部のインフラ整備の遅れ
都市部ではインフラ整備が進み、物流や電力供給も安定しています。一方、地方部ではまだ発展途中の地域もあり、商品の配送に時間がかかったり、コストが増えることがありますが、これは地方市場の特徴とも言えます。
この特性に対応するには、物流ネットワークの最適化やフレキシブルな供給計画が重要です。地方市場をターゲットとする際、こうした準備を整えることで、効率的かつ安定した事業展開が可能になります。地方部の潜在力を引き出すための大切なステップです。
私自身、インドの出身で、法律や文化、インフラの壁を乗り越える現場を何度も見てきました。これまでスズキをはじめ、さまざまなプロジェクトに関わる中で、「どうやってこの壁を突破するか」を体験してきました。
こうした経験を活かし、インド事業展開のサポートをさせていただければと思います。具体的な課題がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に解決策を見つけ、インド市場の可能性を実現していきましょう。
3. スズキ株式会社の成功事例:徹底した現地化戦略
スズキ株式会社は、インド市場で圧倒的な成功を収めた日本企業の代表例です。1980年代に進出し、長い努力の末に市場のリーダーへと成長。現在、乗用車市場で40%以上のシェアを誇り、競合を大きく引き離しています。その成功の原動力となったのは、徹底した「現地化」、もしくは、「ロカライズ」でした。
1. 現地市場に合った製品開発

インドの道路事情や消費者ニーズを徹底的に調査したスズキは、インド市場向けに「Maruti 800」を開発しました。このモデルは、都市部の混雑した道路や地方の未整備な道にも対応できるコンパクトで耐久性のある車両です。さらに、ガソリン代が家計に重くのしかかるインドの家庭に配慮し、燃費性能を重視した設計を採用しました。
このような消費者目線のアプローチにより、「手頃な価格」「維持コストの低さ」というインド市場のニーズを完璧に捉え、多くの中間所得層の心を掴むことに成功しました。
2. 現地生産と調達で競争力を向上
スズキは早期に現地工場を設立し、生産プロセスをインド国内に移行しました。これにより、輸送コストや関税を削減し、価格競争力を高めました。加えて、部品調達の大半をインド国内で行い、調達コストを削減すると同時に、地元経済の発展にも貢献しました。
この戦略により、スズキは単なる外資企業としてではなく、現地経済の成長を支えるパートナーとしての信頼を得ることができました。今でも他の日本メーカーのように、EVバッテリーを輸入するのではなく、現地に工場を設立して生産を計画しています。
3. インド政府との連携による市場開拓のスムーズ化
スズキの成功を支えたもう一つの柱が、インド政府との強力な協力関係です。スズキは、インド政府と合弁会社「Maruti Suzuki India Limited」を設立しました。この合弁事業により、政府のサポートを受けながら市場開拓が進められ、規制対応がスムーズになりました。

インド政府も、スズキが現地経済に与えるポジティブな影響を評価し、政策面でのサポートを提供しました。たとえば、土地の確保、税制の優遇、インフラ整備など、スズキの事業を後押ししました。このような政府との連携は、現地化の成功にとって非常に大きなな助けになりました。ここは合法でもなく違法でもない裏話もたくさんありますので、インド政府との関係性を強化するためのコツなど詳しく知りたい方ぜひ一度相談ください。
4. ブランドの現地化と消費者の信頼獲得
スズキは、製品だけでなくブランドそのものの現地化にも力を入れました。広告やマーケティング活動も地元の言語や文化を反映させたメッセージを発信。これにより、消費者に親しみやすさを感じさせることに成功しました。

さらに、インド国内での広範なディーラーネットワークを構築し、アフターサービスにも力を入れました。多くの消費者が車を初めて購入する市場では、購入後のサポート体制が非常に重要です。スズキは信頼できるブランドとしての地位を確立し、多くのリピーターをキャプチャーしました。
5. 持続可能な成長を見据えた戦略
スズキは、短期的な利益だけではなく、持続可能な成長を見据えた戦略を展開してきました。近年では、インドの電動車市場にも積極的に参入し、環境規制の強化に対応。また、地方市場への進出を強化することで、より幅広い層の消費者にリーチしています。これまでにインド国内で4億人以上の人々にサービスを提供してきたスズキは、次に「次の10億人(Next Billion)」をターゲットに、ベンチャー市場で新たな需要を創出し、次世代の成長を力強く支えています。
スズキのインドでの成功は、現地市場を深く理解し、フレキシブルに対応した結果です。「現地化」「ロカライズ」は生産や製品開発だけでなく、マーケティング、サプライチェーン、政府との協力、消費者との信頼構築まで含む戦略です。インド事業展開では、この視点が成功の鍵となります。
4. インド事業展開を支える具体的なサポート
インド市場で成功するためには、準備が重要です。市場の特性をしっかり理解し、それに合った体制を整えることで、よりスムーズで力強いスタートを切ることができます。ここでは、その具体的なステップを紹介します。
市場調査と戦略の構築
インドは地域ごとにまったく異なる顔を持つ国。北と南、都市と地方では消費者のニーズはまったく違います。だからこそ、事業展開する前にターゲット市場を徹底的に分析し、地域ごとに最適な戦略を立てることが重要です。
例えば、自動車業界を例にとると、都市部ではコンパクトカーが人気ですが、地方では耐久性のある車両が求められることがあります。両立すると高くなって誰も買えなくなってしまいます。こうした違いを理解し、消費者のニーズに合った製品やサービスを提供することで、競争力を確保できます。
法規制と税務対応
インドでは州ごとに法律や税制が異なり、事業展開時には多くの課題が発生します。こういうとき、現地の専門家と協力するのがとても大切です。法規制や税制の違いをしっかり理解して、事前にバックアッププランを考えておけば、トラブルを防ぐことができます。
たとえば、ある州では課税率が低くビジネスに有利でも、隣の州では同じビジネスモデルが成り立たないことがあります。これを見落として進出すると、計画に大きなダメージを受けます。現地で付き合いがある優秀な専門家の紹介は可能ですのでぜひ相談ください。
現地パートナーとの連携
インドで成功を目指すなら、信頼できる現地パートナーの存在がとても重要です。物流、販売、人材採用などで現地の専門家や企業と協力すれば、事業を効率よく進めることができます。
現地パートナーは、ただ業務をサポートするだけじゃなく、文化や市場についての深い知識を提供してくれる頼もしい存在です。特に地方への進出や新しい分野に挑戦する場合、その力が大きな助けになります。
5. 次のステップ:インド進出を具体化する
インド市場には、大きな可能性が広がっています。しかし、その可能性を実現するには、正しい準備と行動が必要です。次のステップを踏む際に重要なポイントを伝います。
明確なビジョンを持つ
インド事業展開計画を成功させるためには、まず「何を目指すのか」をはっきりさせることが大事です。どの地域に進出するのか、どんな製品やサービスを提供するのか、そしてどうやって競争に勝つのか。それを具体的に考えることで、進むべき道が見えてきます。
フレキシブルな対応力を持つ
インドではよく「最初はうまくいかないのは当たり前」と現地のビジネスマンがよく言います。確かに、インド市場は動きが速くて、予期しない変化がよく起こります。そういう変化に対応するためには、フレキシビリティがとても大事になります。たとえば、法規制が急に変わったり、地域ごとの消費者の好みが違ったりするので、そのたびに戦略を変えられる力が必要です。
また、このフレキシビリティはインド市場で信頼を得るためにも重要です。消費者やパートナーに信頼される企業は、変化をうまくチャンスに変えることができます。こうした対応力が、インド市場開拓で成功する大きなポイントだと感じています。
インド出身として、これまで多くのプロジェクトに関わり、さまざまな経験を積んできました。スズキでの経験はもちろん、他にもいろいろなプロジェクトを通じて、法規制や文化的な違い、インフラの課題など、インド特有の問題をどう乗り越えるかを学んできました。こうした経験を活かして、インド市場への進出をしっかりサポートできます。
インド事業展開の準備や課題について相談したいことがあれば、いつでも連絡してください。一緒にインド市場の可能性を引き出す計画を作り上げましょう!
2025年4月追記:トランプ関税とリスク分散
最近またトランプ氏の再登場で、「日本に対する関税どうなるの?」という空気がジワジワ出てきています。もし関税強化が現実になれば、アメリカ市場に依存している企業ほど、ダメージは大きいと思います。
だから今こそ、リスク分散としてインド市場にちゃんと向き合う時期じゃないかなと感じています。インドは人口もマーケットも圧倒的で、生産拠点としてもアリです。関税でアメリカが揺れるなら、こっちはインドで攻める。そんな動きが今後もっと必要になるかもしれません。
スズキのように早いタイミングで現地化して成功してる事例がある以上、今動くかどうかで5年後の差がつくのは明らかです。アメリカでちょっと不安だなと感じたら、インドを次の柱として一度真剣に考えてみるのはアリだと思います。
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