日本企業がIITと組んでインドにR&D拠点をつくるという選択肢
- ラジャ・ゴピナート

- May 16
- 4 min read
Updated: Jun 5
インド市場を「売る場所」として見ている日本企業は増えてきました。でも、ここ数年の流れを見ていると、「つくる場所」「育てる場所」としてのインドに目を向け始めている企業も出てきています。中でも、IIT(インド工科大学)との連携によるR&Dセンター設立は、その最前線にある取り組みの一つです。
僕自身、IIT卒業生として15年以上インドと日本の間で仕事をしてきましたが、最近とにかく問い合わせが増えているのがこの「R&D×インド」のテーマです。
なぜ今、R&Dをインドに置くのか?
優秀な人材が豊富(しかも採用しやすい)
IITをはじめ、インドにはトップクラスのエンジニアが毎年数万人規模で卒業しています。Google、Apple、Meta、Teslaのリーダー層にIIT出身者がゴロゴロいるのはよく知られた話ですが、実はその多くがまだインドに残っていて、ローカル企業や研究機関で力を発揮しています。

せ 研究環境が整ってきた
昔はインドのR&Dというと「コストの安いアウトソーシング」というイメージが強かったと思います。でも今は違います。IITやIIMなどの大学には、世界的なスタートアップを生んだ研究室が増えてきています。研究の深さ、スピード感、実用化までの距離感が日本と全然違います。悪口ではありませんが、日本は計画的なところが強みですが、一方でインドは「とりあえずやって見よう!」という精神が強いです。
政府・大学・企業の連携が加速
インド政府は大学主導の産学連携プロジェクトにかなり積極的で、R&D施設に対して税制優遇措置や土地の無償提供といった支援もあります。大学側も企業のニーズに応じて柔軟に研究テーマを調整してくれるケースが多く、手続きもシンプル。日系企業が苦労しがちな「社内調整の時間」に比べると、信じられないくらいスピーディーに物事が進みます。
IITとの共同研究、どう進めればいいの?
インドにR&Dセンターを持つ。これまでは一部の大手企業だけの話でしたが、今や誰でも、しかも低コストで、インドのトップ人材と一緒に技術開発ができる時代になりました。特に、**インド工科大学(IIT)**との連携は、日本企業にとって“地に足がついた形”でインドに進出する最高の入り口です。
ここで「興味はあるけど、どう進めていいか分からない」という声をよく聞きます。ざっくり言うと、以下のステップを踏めばスムーズに進められます。
ステップ①:研究テーマの設定
企業側のニーズをベースに、IITとディスカッションしながらテーマを具体化していきます。AI×農業、軽量材料×モビリティ、クリーンテック、UX設計など、最近注目されているテーマはいろいろあります。
ステップ②:MoU(覚書)締結
IITとの協定を結ぶことで、共同研究や人材派遣が公式にスタート。拠点の設置場所や研究員のアサインなど、必要なリソースの調整を行います。
ステップ③:現地拠点の立ち上げ
ここで秘密のポイントです。実は各IITの中に「リサーチパーク」という施設が存在し、こちらは企業に場所を貸し出しています。大掛かりな投資をしなくても、「マイクロ・イノベーション・ハブ」という形で小さく始めることができます。実際に、BoschやSamsungなどもすでにこの形でIITの中に研究所を持っています。

企業の名前を冠したCoE(Center of Excellence)として、IIT内で研究開発を簡単に始められます。必要に応じて、僕の方で大学側との折衝や設営の支援も行っています。
日本企業にとってのリアルな価値
R&Dをインドに置くことには、単なるコスト面以上の価値があります。
未来の市場に“現地目線”で入り込める
日本から見ると「まだ時間がかかる」と思える市場でも、インドの現場ではすでに動き始めていることが多いです。現地で開発・実証をやることで、ユーザーのリアルな声を製品に反映しやすくなります。
ブランディングにも効く
日本企業がIITと組んでR&D拠点を持っているという事実自体が、インド国内での信頼につながります。優秀な人材の採用にもプラスになりますし、政府や地元企業との関係性も築きやすくなります。
僕自身、15年前にIITを卒業してから、日系企業のインド進出にずっと関わってきました。R&D設立や人材採用支援、政府との折衝まで、様々なフェーズでの経験があります。実際にIITと一緒に動くとなると、手続きや文化の違いで戸惑うこともあると思います。でも、そのあたりの調整含めてしっかりサポートできますので、「ちょっと話を聞いてみたいな」という方は、ぜひお気軽にご連絡ください。 info@gopinathraja.com
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